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2015年09月27日

第628回「日常」

 シルバーウィークもすっかり定着し、今年は天候も味方していたので、行楽地へ向かったり、十分満喫された方も多かったのではないでしょうか。個人的には不意の祝日が嬉しいと思うタイプなので、なんでもかんでも連休にしてしまうのは、祝日に個性がなくなってしまうという懸念もあるのですが、休みをとることが苦手な日本人にとっては、有給休暇を消化するよりも、このように「休日」を用意してもらうほうがありがたいのかもしれません。
 連休の最終日ともなると、「明日から仕事か」と、日常に戻ることへの後ろ向きな気持ちがため息となって体から漏れる夕方。休みが長ければ長いほど、息も深くなるのかはわかりませんが、そう簡単に、「すっかりリフレッシュしたし、さぁ、明日から仕事がんばろう!」みたいにはならず、むしろずっとリフレッシュしていたい、戻りたくないという方向に。気持ちもわかります。満員電車に揺られ、上司に気を使い、部下にも気を使う日々。代わり映えのない景色。気が重くなるのも当然です。しかし、会社勤めをしていない僕が言うのもなんですが、これまで生きてきて感じるのは、日常ほど偉大なものはない、ということです。
 どんなに贅沢をしようが、どんなに連休を満喫しようが、フェスではしゃごうがバーベキューをしようが、なんだかんだで日常がもっとも輝いている。たとえ嫌気のさす毎日でも、代わり映えのない景色でも、当然のようにやってくる日常こそが、かけがえのないものなのではないでしょうか。
 当然のようにと言いましたが、日常というものは、決してあたりまえに存在するものではありません。いつ何時、この生活が、崩壊するかわかりません。天災であれ、病気であれ、こちらがどうやっても避けられないことだってあります。だからこそ、いま、この日常の大切さを感じるべきでしょう。いつまでもあると思うな、親と金、そして日常。あなたの日常を、あなたの日常を支えるものを、大切にするべきでしょう。
 日常があるからこそ、旅行にも行けて、温泉に入れて、おいしいものを食べられて。なかには海外に行くために仕事頑張る、という考えもありますが、資金集めという観点ではそうかもしれません。でも僕は、日常のための海外旅行だと思っています。特別な時間やご褒美は、普段の生活を支えるもの。日常があるからこそ、特別な時間が輝く。つまり、非日常は、日常に栄養を与えるものであって、日常を支えるために存在していると思っています。
 すると、必ずしも生活水準だけが幸福の尺度とはならなくなり、誰かと比べる必要もなくなります。むしろ、この日常があることこそがなによりの幸福なのです。そう思って、もういちど見渡してみてください。キラキラと輝いていることに気づくでしょう。そうです、日常は輝いているのです。それなのに、その輝きに慣れてしまって、わからなくなってしまう。この一杯のコーヒーが。同僚と愚痴をこぼす時間が。おはようと言えることが。無愛想なコンビニの店員も、あなたの日常を支える重要な要素。もちろん人間ですから、腹を立てたり、悲しむこともあります。でも、そういったことを含めて、あなたをとりまく「日常」が、どれだけ恵まれていることか。
 あたりまえのように存在しているものこそ、失った時にその存在の大きさに気づくもの。だからこそ、日常を、日常を支えるものを、大切に。

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2015年09月06日

第627回「ロケフェスレポート③」

ギターの音に女性の声が重なりました。
「MayJ.さんが、ロケフェスに帰ってきました〜!!」
もうこの距離で会うことはないでしょうと言ったのはいつだったか、もう遠くへ行ってしまったと思っていた歌姫がリキッドルームに戻ってきてくれました。以前よりもパフォーマンスに安定感を感じるのは受け手の気分なのでしょうか。毎日のように聞いていたあの名曲も、生で聴くのははじめてという人も少なくないはず。アーティストとしてひと回りもふた回りも大きくなったMayJ.さんの最後の曲はやはりこの曲です。
「この曲との出会いも運命的だったのではないでしょうか」
 往年のヒットナンバー「Garden」が流れると、ハリのある声が響き渡ります。そうです、DJ KAORIさんがステージ袖から登場しました。これはいわゆる黄金の流れ。あのときの感動が、いま蘇る瞬間。しかし、リキッドルームが、「愛の庭」に染まったそのとき、事件は起きました。
「あの、機械に詳しく無い人間でも、トラブっていることはわかりますよ」
 まさかの機材トラブル。DJブースまわりに、大人たちが囲んでいます。本番でこうならないためにリハーサルでチェックしたのに。でもこれもライブの醍醐味。MayJ.さんは去り、KAORIさんはブースで機材確認中。こんなときこそMCが輝くとき。MCの手腕が問われます。
「なんか一言あってもよくない?」
 そこにいたのは、人の悪口をいうMCでした。いざというときに人間の本性がでるといいますが、こともあろうに、いないひとの悪口を。まぁこれも電波に乗らないライブのお醍醐味ではありますが、機材以上にMCが故障しはじめました。まだブースからは音がきこえてきません。このままでは、MCの人間性が疑われる。器の小ささが露呈してしまう。そのときです。
「おったまげ〜!!」
耳を疑いました。どこかできいたことのある声。それも、ついさっき聞いた声。
「私でよかったら、力、お貸ししましょうか」
 女神に見えました。救いの手を差しのべたのは、まさかの後輩の平野ノラ。先輩がガス欠寸前のところで助けにきてくれたのです。
「じゃぁ、あれやっちゃうか?」
 トイレ休憩で完全に掴んだ彼女は、もはや向かうところ敵なし。バブリーボックスでさらに飛び交う50音。世代交代の波を感じずにはいられませんでした。
「もう、お前のフェスだよ。」
第6回ロケットマンフェスは、第1回ノラフェスに変更されました。
「おっと、音がきこえてきた〜!ぱーりーぴーぽー!!」
そしてはじまるDJ KAORIさんのパーティータイムは、機材トラブルで申し訳ない気持ちだったのか、渾身のスーパー早替えプレイ!90秒に一曲のペースでめまぐるしく駆け抜けてゆくダンスチューン!本気の姿を目撃したようで、気迫に圧倒されました。そして見事に盛り上げたKAORIさんからバトンを受け取ったのは、ロケフェス初登場の男でした。


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