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2020年05月08日
第831回「元には戻らなくても」
やはり緊急事態宣言は延長されました。まったく辛くないといえば嘘になるけれど、ほんの少しこの生活に慣れてきたところもあります。サイクリング・コースの川沿いを走ると、とても水が澄んでいて川底まで見えることがあります。経済活動が縮小したからなのかわかりませんが、私はこれまであんなに綺麗な姿を見たことはありませんでした。クリアになったのは、川の水だけではありません。この期間に色々なものが見えてきたのではないでしょうか。人の考え方や行動。普段は知ることのできない人柄や性格。それは自分においてもそうです。急に表れた意外な側面に驚いたり。
すっかり外出しなくなり、途端に喪失する曜日感覚。生活リズムが一気に破綻しました。カレンダーを見ても体が実感していない。外出しないから、身だしなみも怠慢になり、非常にだらしない生活が始まりました。このままいくとまずいのではないか。しかし、ある時不思議な現象が起きます。自制心が働いたのか、単なる老化なのかわかりませんが、たとえ用事がなくても、たとえ誰とも会わなくても、ちゃんとしておこう。人として、早起きはもちろん、髭を剃ったり、髪を洗ったり、崩壊しかけたリズムがリビルドされ、新たなリズムが刻まれました。もしかしたら、普段よりも健康的な生活になっているかもしれません。
そして、もう一つ自分でも意外だったのは、一言ネタの動画をあげたことです。きっと、こういった事態にならなければやっていなかったと思います。一言ネタをやることで、工場が稼働し始め、頭の中が活性化されました。たとえ小さくても、一つの歯車が動き出すと、次第に他の歯車も動き始め、大きなエネルギーに繋がる。自分という人間が歩き出している感覚がありました。だから、外出して羽を伸ばしたい気持ちこそありましたが、決して退屈ではなく、得られるものも多かったと思います。
志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなられたことは非常に残念です。岡江さんは、数えるほどしか共演していませんが、はなまるマーケットでたくさん褒めていただいたことを覚えています。あれほど朗らかな方はなかなかいません。また、すこし前に近所の飲食店でご夫婦でいらしているのも拝見していたので、まだ信じられない部分もあります。それは志村さんにしても同様ですが。ご冥福をお祈りいたします。
先日再放送された「こどクラ」がこんなにも時代にフィットしてしまうとは思いませんでしたが、今の時代に「ふさわしい」ものを意識したら、あのような番組はできなかったでしょう。あのとき作っておいて良かったと思います。そして「5時に夢中!」の再開。コメンテーターは「最新の有機ELパネル」で出演となりましたが、あの手作り感満載の雰囲気に、お茶の間に呼吸するタイミングを与えたのではないかと思います。一堂に会すまではもう少し時間がかかりますが、大きな変化の中で、できるだけ相変わらずな空気をお届けたいと思います。
きっと、全ては元に戻らないと思います。かつて我々が、水道水を飲んでいたのに、いつの間にかペットボトルのミネラルウォーターを飲むようになったように、新しい価値基準で動くようになるでしょう。社会構造が変わる時。今まで当たり前だったことが当たり前ではなくなる。しかし、日常がいかに尊く、奇跡だということは変わりません。日常に感謝する気持ちはますます強くなるのではないでしょうか。たとえ、元には戻らなくても。
PS:次回の配信は、緊急事態宣言の期限後の、6月7日になります。